東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)223号 判決
一 請求の原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、審決の取消事由の有無について検討する。
1 成立に争いのない甲第二号証ないし第四号証によると、<1>本件意匠及び引用意匠の押金には、いずれも、丸棒を梯形状に折曲げた提手の短辺(枠体のうち、把手部分すなわち長辺に相対する辺)の部分が、回動自在に装着できるように、長手方向中央部に円弧状に隆起した突条が、押金の長さだけ形成されており、その横断面は、ほぼ別紙図面(〔編註〕省略)(3)第二図の形状(原告のいう「かまぼこ状」に近い。)となつており、ただ、本件意匠の押金にあつては、右突条部の両端に近い部分で、その断面における弧状部と直線状部との交わる部位の弧状部側に、突条部の内方に向けて一対づつの小突起があるのに対し、引用意匠の押金にあつては、これがない点において、及び<2>両意匠の押金には、いずれも前記の中央部突条隆起をはさんで両側にそれぞれ六条づつ(計一二条。六条は、中央付近に余地を残した各三条よりなる。)の溝(隆起)が形成されているところ、その溝の横断面は、本件意匠にあつては円弧状であるのに対し、引用意匠にあつては三角状である点においてそれぞれ相違していることが認められる(なお、原告は、本件意匠の押金の中央部に形成された突条隆起は、その全体が横断面において別紙図面(3)第一図のように壺をさかさまにした形状のものであるかのように主張するが、前掲甲第二号証、第四号証に徴し、肯認しえないことが明らかである。)。
2 ところで、右<1>、<2>の相違点についてみるに、これらの点は、両意匠における極めて限られた小部分における差異であり、しかもこの部分が看者の注意をとりわけひくものとは考えられず、結局、両意匠は、その余の主要な構成がすべて共通であり、極めて近似するものというべきである。
なお、成立に争いのない甲第五号証ないし第八号証によると、罐の提手に関する意匠として、梯形状の提手のみの意匠とこれに本件意匠におけると同種の押金が結合された意匠とが、いずれも同一人(被告会社代表者)を創作者とするものではあるが、それぞれ独立に意匠登録がされていることが認められる。しかし、右各事例から、押金のない梯形状の提手の意匠と、この梯形状の提手に押金が組合わされた意匠とが類似するか否かの論をすることができないわけではないとしても、本件はこれと異なり、梯形状の提手が押金と組合わされた本件意匠とその梯形状の提手及び押金のいずれをも開示する引用意匠との対比に関するものであるから、右の登録例が存するからといつて、このことが前記の対比判断を左右しうるものではない。
3 本件意匠と引用意匠とは、基本的構成態様から受ける看者の印象は共通であり、両者の相違点は、右の印象を破るほど顕著なものではないから、全体として両者は互いに類似する意匠というべきであり、審決の認定には誤りがない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。